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東京高等裁判所 昭和54年(行コ)71号 判決

東京都荒川区西尾久一丁目三一番一五号

控訴人

大関直吉

右訴訟代理人

田口穣

同都同区西日暮里六丁目七番二号

被控訴人

荒川税務署長

富島治郎

右指定代理人

野崎弥純

池田準治郎

岡冨貴雄

小澤邦重

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

一  求める判決

(一)  控訴人

1  原判決を取消す。

2  被控訴人が昭和五〇年三月七日付でなした控訴人の昭和四六年分および同四八年分所得税についての更正処分ならびに重加算税賦課決定処分を取消す。

3  訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人の負担とする。

(二)  被控訴人

主文第一項と同旨。

二  主張

当事者双方の主張は、当審において控訴人が「山梨県甲府市平瀬町三、一七〇番地一ほか四筆の山林(本件山林)を控訴人が売渡した相手方は、木村宏司こと田島弘である。」と陳述したほか、原判決事実欄(当事者の主張)第一ないし第四記載のとおりであるから、それを引用する。

三  証拠

(一)  控訴人

1  甲第八号証、第九号証の一、二、第一〇号証の一ないし四、第一一号証の一、二、第一二号証、第一三号証の一ないし四、第一四号証の一ないし六、第一五号証の一ないし五を提出。

2  当審における鑑定人日下部宏の鑑定結果、証人山田正二、同田島弘、同須永誠一の各証言、控訴人本人尋問の結果を援用。

3  乙第五六号証の一、二の成立は知らない。第五七号証、第五八号証の一、二の成立は認める。

(二)  被控訴人

1  乙第五六号証の一、二、第五七号証、第五八号証の一、二を提出。

2  甲第一三号証の一のうち名刺部分の成立は知らないが、その余の部分の成立は認める。第一四号証の一ないし六が控訴人主張のような写真であることは知らない。その余の前記甲号証の成立は知らない。

(三)  右のほかは、原判決事実欄(証拠)に記載のとおりであるから、それを引用する。

理由

一  当裁判所は、控訴人の本訴請求を失当なものと判断するが、その理由は、次に訂正、附加するほか、原判決理由欄に記載(但し、原判決一五枚目-記録三一丁-表二行目冒頭から同二四枚目-記録四〇丁-表一〇行目の「棄却することとし」まで)のとおりであるから、それを引用する。

1  原判決一六枚目-記録三二丁-表六行目の「木村宏司」を「木村宏司こと田島弘」とあらため、同表八行目冒頭から同裏三行目の「ことなどに加え、」までを「原審における証人藤平利雄、当審における証人田島弘の各証言、原審および当審における控訴人本人尋問の結果は、これに副うものであるが、成立に争いのない乙第五七号証により真正なものと推認される乙第五六号証の二および当審における証人田島弘の証言(但し、次記認定に副う部分に限る。)によると、田島弘は、昭和四五年一月一〇日、控訴人が本件山林を訴外末木和夫から買受けた際、その契約に立会い、契約書(乙第五六号証の二)にも立会人として署名押印し、控訴人とは顔見知りの仲であったことが認められるから(右契約書は知らず、右契約に際し田島弘に会ったこともない旨の当審における控訴人本人尋問の結果は、右証拠に照らすと信用できない。)、本件山林は、木村宏司という見知らぬ人物に売却した旨の原審における控訴人本人尋問の結果および最近(当審)になってから右人物の本名が田島弘であることが判明し、その所在をつきとめた旨の当審における控訴人本人尋問の結果はいずれも採用し難く、これに加え、」とあらためる。

2  同二〇枚目-記録三六丁-裏二行目の「証人竹内義雄」の前に「原審における」を加え、同裏三行目の「坂巻良夫」の次に「、当審における証人山田正二、同須永誠一」を加え、同裏三行目の「原告」を「原審および当審における控訴人」とあらため、同裏一一行目の「畑地であること」の次に「(見ず知らずの業者(中井工務店、山喜工務店)に注文した旨の原審および当審における控訴人本人尋問の結果はそれ自体において不自然というべきであるが、仮にそのようなことがありえたとしても、請負業者が工事代金の領収書に虚偽の住所を記載する必要性があるとは考えられない。)」を加える。

3  同二一枚目-記録三七丁-表九行目の「できず」の次に「なお、当審における証人須永誠一の証言および同証言により真正なものと認められる甲第一五号証の一ないし五によると、須永誠一は昭和四八年二月一四日、中井工務店の紹介で山喜工務店を知り、山喜工務店の注文で仕事をしたとのことであるが、原審における控訴人本人尋問の結果によると、山喜工務店は昭和四七年一一月頃から同年暮までの間に仕事をしたとのことであり、右両証拠は相互に矛盾し、いずれも信用し難い。)」を加え同裏六行目の「除く」の次に「、いわゆる本体工事代金」を加える。

4  同二二枚目-記録三八丁-裏七行目末尾に続いて「なお、昭和四八年九月完成時点における本件建売住宅類似の木造建物の建築工事費は、一棟当り三三八万三、二〇〇円である、との当審における鑑定人日下部宏の鑑定結果は、水道工事など、附帯工事費および建売業者の利潤を加算、斟酌するものであるから、右認定を動かすものではない。そして、前掲乙第五四号証によると、控訴人は、宮前の建売住宅建築につき、本体工事のほか、水道工事などの附帯工事代金として合計六五〇万七、二九〇円を支出していることが認められるから、これと前記控訴人が増田建設に支払ったと認められる一、八二〇万円、前記内田に支払われたと推定される四〇四万四、〇〇〇円の各本体工事代金を合算すると、宮前一一棟の全工事代金は合計二、八七五万一、二九〇円、一棟分のそれは右金額を一一で除した二六一万三、七五三円となり、乙第四〇ないし第五〇号証によると、宮前一一棟の平均床面積は五六・九四平方メートルであることが認められるから、その一平方メートル当り建築工事費は、四万五、九〇三円となる。ところが成立に争いない乙第五八号証の一、二によると、財団法人建設物価調査会の調査による木造建物の一平方メートル当り建築工事費は、昭和四八年一月、三万八、三〇〇円、同年三月、四万一、二〇〇円、同年六月、四万五、〇〇〇円、同年九月、四万七、八〇〇円と推移したことが認められるから、右四万五、九〇三円の建築工事費は平均的であり妥当なものということができる。」を加える。

5  同二四枚目-記録三〇丁-表一〇行目の「棄却することとし、」を「棄却すべきである。」とあらためる。

二  そうすると、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は正当であり、本件控訴は理由がないことになる。よってこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行訴法七条、民訴法九五条本文、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡垣学 裁判官 手代木進 裁判官 上杉晴一郎)

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